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2001年08月25日
第071回 「女殺し油地獄」
監督:堀川弘通さん、インタビュアー:弓家保則さん
 「女殺し油地獄」、フィルムのきれいだったこと、前回の「乱れ雲」もそうでしたが、これぞフィルムセンターで開かせていただいている証というように見事な色合いで、その上キャスティングといい美術といいことさらに日本映画の全盛期を髣髴させるものでした。
 堀川監督「この映画を見たのは何年ぶり、こういう写真だったのかと思って見ていました。これの前に、『琴の爪』という時代劇を撮って、評判が良かったんで、もう一本時代劇をやらないかと、当時太陽族がはやっていて、これは近松の太陽族だからといわれて『女殺し油地獄』を引き受けたんです。
 主人公の中村扇雀が人妻新珠三千代を殺す所は、残酷すぎるということで何度もデュープ(フィルムをコピーすること)を重ねたんですが、ザラザラになって逆に残酷さが増しちゃいましたね。油の中を逃げまわるあの場面は油じゃなくてふのりなんですよ、本物の油じゃすべっちゃうので。ところがふのりは、乾くとバリバリになるので、急いで本番をやりました。
 映画界へ入ろうと思ったきっかけは、当時市立一中、今の九段高校に入って、その時の同級生に映画好きがいて彼に引っ張られて映画を見始め、それからものすごく映画が好きになって、こんな面白い世界があるんならやってみたいなと思って・・・。『モロッコ』は感動して七回以上は見ました。戦後見たら、何だこんな写真だったのかって・・・、若いときの感受性ですね。
 第一作の『あすなろ物語』は黒さん(黒澤明氏)の脚本で、出来上がりの評判も良かったんだけど、フィルムをむちゃくちゃに使って会社から猛烈に怒られ、助監督に降格させられたんです。 時間もお金も会社の決めた枠の中で全て収める成瀬巳喜男監督のところで見習えと、2作位助監督をやりました。」
 当日は、出演されていた香川京子さんもお見えになり、壇上に上がっていただきました。
「若かったなあと思いました」今でもお美しい香川さん、映画の中ではふっくらとしていて本当にかわいらしく、ひたむきな演技にご自身も当時を思い出して、感無量のご様子でした。
「今に通じる切れちゃう若者って、あのように追い込まれていくんだ・・・」とも。
 堀川監督は、昨年10月に毎日新聞社から「評伝 黒澤明」というご本を出されています。「わが青春に悔いなし」「生きる」「七人の侍」等黒澤作品の助監督を務めた後、彼の脚本(「あすなろ物語」)で監督デビュー、以来黒澤氏との付き合いで自分が見て知っていることだけを、淡々と飾らないで書かれている、これも堀川監督のお人柄でしょうか。
この著書が東急文化村主催、第11回Bunkamuraドゥ マゴ文学賞に一人選考委員である、小林信彦氏の手によって選ばれ、10月10日レストラン「Bunkamuraドゥ マゴ パリ」で授賞式が行われました。私も出席させていただきました。当日香川京子さんも出席されて、堀川監督とお二人とも「先日フィルムセンターで見た『女殺し油地獄』は、フィルムもきれいですばらしかった」と挨拶の中で話されました。それほど監名会第71回『女殺し油地獄』の上映時のフィルムはすばらしかったのでした。
(竹下 資子)





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