今回は、2月に当法人の顧問に就任いただきました深作監督にお越しいただきました。作品観賞後、深作監督を壇上にお迎えして映文振センター副理事長の寺脇研さんのインタビューで対談がはじまりました。
・・・「蒲田行進曲」について・・・
寺脇:発表後20年経った今も全く色褪せていない新鮮な作品で、日本映画のオマージュとも呼べる名作です。
深作:この作品は、”映画界を描いた演劇の映画化”であり幕切れのシーンや撮影所の現場的な箇所は私自身の創作ですが、あとはほとんどつかこうへいさんの脚色によりました。大部屋俳優の哀歓を描いたもので、自分としては比較的取り組みやすいテーマでした。当初、この企画は東映に持ち込まれたんですが、岡田現会長は受け入れなかった。楽屋落ちの話は当たらないというのがその理由でした。結局、松竹の企画でOKをとりました。但し撮影所は東洋一の東映京都、大部屋俳優も殺陣の巧い東映陣でとの条件でスタートした。大部屋俳優は撮影所近くに住まい、何時でも現場に駆けつけられる態勢をとって仕事、私生活がミックスしたような日常で、ハリウッドのように金はかけないが熱気とか執念は極めて旺盛で日本映画をよくしようとの気概に満ち溢れていました。この大部屋俳優たちに囲まれた平田満(ヤス)も松坂慶子(小夏)もすばらしい演技でした。”階段落ち”のシーンがクライマックスですが、ヤスがすねて小夏を痛め大暴れするシーンはワンカットの長廻しで、特に松坂慶子はよく耐えて演出のイメージに応えてくれました。昨日亡くなられた清川虹子さんの出演も懐かしいし、又、千葉真一、志穂美悦子らの友情出演も作品に華を添えてくれました。
・・・深作監督の作風・・・
寺脇:監督生活40年、作品60本のすばらしい実績です。愛を真正面から捉えたもの、激しいアクションもの、のニつの傾向に大別されますがいずれも面白い。そのコツは何でしょう。
深作:映画は生もので、各時代その都度観客は敏感に反応します。その時代感覚や変化にいかに対応していくかが創造の基本だと思います。観客が鑑賞中に中ダルミを感じてモゾモゾするのを見るのは辛いし 恐い。何よりも人間に対する愛、これを失わないことが全ての原点だと心がけています。
・・・次回作について・・・
寺脇:新作についての構想はいかがですか。
深作:年を経ると手詰まりした時に耐えられる根気がなくなって中々腰があがらないんです。
あのエネルギッシュな60本もの作品は何処から生み出されたものでしょうか。イメージに反して深作監督は温厚で柔和な方であります。でも、”年を経ると”などといわれても我々には信じられません。近作「バトルロワイヤル」を観てもそのバイタリティには圧倒されます。監督、これからも70本目いや80本目の面白い作品をどんどん作られて我々を又、楽しませてください。
|