5月15日、京橋のフィルムセンターで開催された第82回「監名会」(NPO法人映文振センター主催)の上映作品は渋谷実監督の「現代人」(製作・配給は松竹)。
フツーの人が理解できない突拍子もない行動や言動で人々を驚かせる若い世代の人々を、よく「恐るべき○○歳」とか「今どきの人」と揶揄とも尊敬ともつかぬ表現をするようだが、そのルーツは「現代人」にあるのだろうか?ふとそう思った。
上映後、本作に主演した俳優の池部良さんが撮影秘話などを話された。
都会的なマスクとニヒルで知的な雰囲気を漂わせ、日本映画界のトップスターでありつづける池部良さん。池部さんが演じた<小田切徹>の生き方は、無鉄砲なのか、合理的なのか、称賛に値する自己犠牲的生き方なのか? 製作されてから50数年を経た今、再び議論するに値するだろう。
1952年(昭和27年)度の本作。建設局の中で起こる収賄事件を題材にし、戦後日本社会のダークな面が描かれるが、池部さんは「昭和27年という年は、敗戦による人心の荒廃が顕著だった。そういうものに対して渋谷監督は社会的なメッセージをこめた作品を作りたかったのだと思う」と語った。
大学卒業後、東宝映画文芸部に入社したが、間もなく島津保次郎監督に見出され、以後数多くの映画に出演、本作のオファーがきた時点では既にトップスターの地位を確立していた。その池部さんの前に厳然と立ちはだかっていた「五社協定」という壁を無視して出演した本作についてはどんな思いを持たれているのだろう。
「それまでは俳優という仕事に少しもプロ意識をもてずズルズルやってきていたが、本作出演以来、俳優というものは男子一生の仕事であるという気持ちが生れた。そういう意味で『現代人』は自分にとってターニングポイントとなった記念すべき作品だ」と語った。
本作が公開された時、<小田切徹>は“現代的”に映ったのだろうが、平成の世に生きる現代人は本作をどう観るのだろうか? 価値観の変容を知る意味で興味津々だ。
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