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2006年11月28日
第091回 「非行少女」
女優:和泉雅子さん、映画評論家:寺脇研さん
 イジメを苦にした子どもの自殺、児童虐待、青少年の犯罪……子どもがキーワードになる事件が相次いでいる。
 「邦画の検証と継承」をめざす映文振センター主宰の第91回「監名会」(年4回)が、11月28日、京橋のフィルムセンター小ホールで開催された。上映作品は、故浦山桐郎監督作品「非行少女」(昭和38年)。製作配給は日活。北陸地方の小さな町で、無責任な親と貧しさゆえに“非行少女”とよばれる主人公が、社会の偏見に耐えながらも、逞しく自分の力で歩いていく姿を描いた青春異色ドラマだ。この作品は6年前に撮影監督 高村倉太郎さんをゲストに招いて上映している。氏は当法人の副理事長を務めていたが昨年11月21日に死去、一周忌にあたる今年追悼の意をこめて再上映された。上映後、本作の主演女優の和泉雅子さんに、映画評論家の寺脇研さんがお話を聞いた。司会進行は俳優の手塚ユウキさん。
 11歳で劇団若草に入り、14歳の若さで日活に入社した和泉さんは幾多の映画に出演し、その後冒険にも挑戦し2度目で北極点に到達するという偉業を成し遂げた。本作に出演した時は、若干15歳だったという。
「監督は、この非行少女の役にもっと素人の雰囲気をもつ目立たない女優を使いたかったようで、私には撮影中は厳しく幾度もテストを繰り返しました。自分も最初は〈悪い子〉の役をやりたくなかったんですが、会社が意欲的だったので引き受けました。撮影中、高村さんは自分の演技を採点してくれ励みになりました」と和泉さんは語られた。
年齢差はあるが、共に江戸っ子、同じ幼稚園の出身、職場(日活)も同じ、ということで高村さんのことを“先輩”と呼ぶ和泉さんは気さくで溌剌とした喋り、豪快な笑いが実に気持ちのいい印象を与える。
結果、和泉さんは大人たちの要求にこたえ見事に役を演じきり、モスクワ映画祭で金賞を受賞するという名誉を監督にもたらした。
 作中の少女が送られた保護施設「北陸学園」は実在で、実際にそこで暮らす子どもたちが出演したそうだ。子どもたちの「更正」より、恵まれない家庭環境で暮らす子どもたちの「救済」を目的とした施設だった。当時、このような施設は町のあちこちに存在していたという。豊かな時代の現在の方が、こんな施設が必要とされているのではないだろうか? 40年以上前の作品が突きつける現代への問い。少しも古さを感じさせないモダンな作品だ。
(桑島 まさき)





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