「昭和」が脚光を浴びている。さほど遠い時代ではないのに、ひと昔前のような古さと懐かしさを感じるのは、時代が急速に昭和から離れていっているからだろう。
邦画の検証と継承を標榜する映文振センターが主宰する第92回「監名会」(年4回)が、2月10日、京橋のフィルムセンターで開催された。上映作品は、大林宣彦監督の「青春デンデケデケデケ」(1992年)。製作配給は東映。
1965年、四国の田舎町。ベンチャーズに憧れ俄にロックバンドを結成した高校生たちの青春を軽妙に描いた、芦原すなおの直木賞受賞小説の映画化。音楽、恋、友情、夢……瑞々しい青春ドラマが弾けるようなテンポで進んでいき、60年代のロック・ミュージックが十分に楽しめる「青春音楽映画」であり、主人公のナレーションが観客と共に「青春」を問いかける不思議な趣向の作品だ。
上映会の後、大林監督と本作の脚本を担当した脚本家の石森史郎さんに、映画史家の佐伯知紀さんがお話を聞いた。司会進行は俳優の手塚ユウキさん。
撮影にあたっては「舞台の観音寺に2カ月フツーに暮らし町の中でカメラを廻した。音楽に情熱を燃やす少年たちを演じる若い役者たちとは1カ月合宿した。上映したら6時間は超えるだろう6百枚の膨大なシナリオを元に撮影を進めた。浅野忠信が若者の一人として出演しているが、一番自分らしい映画だった、と言ってくれた」と大林監督は穏やかな口調で語られた。
常に基本を忘れないように昔の映画を沢山みて、古いモノから新しいモノを得たいというスタンスを続けている大林監督が語るように、名匠・木下恵介監督が遠くなったと感じるのは確かに寂しい。石森さんは、「先輩に対してありがとうという気持ちで映画を作っていきたい」と語られた。
迸る情熱と汗と笑いと涙、バカさと若さを併せ持つ時間を実感できるのは、青い時代だからこそ。子どもの時間は短い。だが凝縮した熱い日々の記憶は人々の後の人生を豊かにしてくれるだろう。
ちなみに〈尾道三部作〉の一つ「転校生」は、今年リメイク版が公開される予定だ。 |