インターネット エクスプローラーダウンロード
推奨環境:IE5.5以上



 HOME > 監名会 > 監名会リポート


2009年05月30日
第101回 熊井啓監督三回忌追悼 「忍ぶ川」
作家:熊井明子 さん、 映画評論家:白井佳夫 さん
 今年2月に記念すべき100回目を迎えた「監名会」。101回目が5月30日、京橋のフィルムセンターで開催され、当会に2度ゲスト出演し、2007年5月23日に76才で逝去された熊井啓監督の三回忌追悼企画として「忍ぶ川」が上映された。1972年度作品で、三浦哲郎の同名小説の映画化、配給は俳優座=東宝。
 生い立ちや家族の暗い過去を抱え、ひたむきに生きる志乃(栗原小巻)と哲郎(加藤剛)。志乃の働らく料亭で知り合った2人が惹かれあい哲郎の故郷・東北の田舎町でささやかな結婚式をあげるまでが、叙情的な昭和の風景や街並みを背景に、哲郎の内省的な心情を交えながら描かれる。
 上映後、熊井監督夫人で本作でシナリオも参加した作家の熊井明子さんと、映画評論家の白井佳夫さんの対談が行われた。
進行司会は俳優の苫野美生さん。
 「今回改めて見て、純正黒白スタンダードで映画をみることの豊かさ、奥行きの深さを感じた」開口一番そう語った白井さんは、「カラー・ワイド映画時代に熊井監督は、あえて黒白スタンダードで、日本の風土を映画に撮るということに強い思いをもっていたと思う。日本の伝統的なモノが消えてゆく中で、『忍ぶ川』には、雪に覆われた東北の美しい田舎町の情景、東京の木場、洲崎などなどが描かれている。それらを撮っておくことの重要さを痛感していた人だ」と続けた。
 「帝銀事件・死刑囚」「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」などの作品から社会派監督と言われた熊井監督の作品の中で、本作はガラリと変わった作品だ。
 「『忍ぶ川』が白井さんはじめジャーナリストの方々に好意的に迎えられたことで、熊井は色々なジャンルの作品が撮れるという自信をもったようです。『黒部の太陽』の時の無理が原因で体をこわしていて、本作撮影中も入院し、病院でシナリオを書いたり、リハーサルをしたりしました」と熊井明子さん。
 「熊井と過ごした日々はいつもハラハラドキドキ、本を読んでいるようでした。私は退屈がきらいなので生まれ変わってもまた彼と結婚したい」とも。
 ラストシーン、差別や屈辱、因習や絶望……。すべてを超えて再出発する哲郎・志乃の表情が印象的だった。
(文:桑島まさき/写真:島崎博)





組織概要   入会案内   個人情報保護指針   よくある質問   お問い合わせ

Copyright (C) 1981 - CurrentYear MCAC All rights reserved.
 
Powered by L-planning