「第111回監名会」(映文振センター主催)が、2月25日、京橋のフィルムセンターで開催された。上映作品は、大ヒットしたNHK連続放送劇(原作/北村寿夫)の映画化「笛吹童子」。三部作のうち第二部「妖術の斗爭」と完結編「満月城の凱歌」を上映。1954年度作品で、監督は萩原遼。配給・制作は東映。映画を観たことはなくても「笛吹童子」のメロディーを聞いたことがある人は多いはずだ。
上映会の後、女優の高千穂ひづるさんに、俳優の弓家保則さんがお話を聞いた。高千穂さんは本作で、萩丸(東千代之介)・菊丸(萬屋錦之介)兄弟を助ける胡蝶尼を演じ人気女優としての地位を確立した。司会進行は俳優の斎木りえさん。
兵庫県で生まれ育った高千穂さんが宝塚音楽学校に進んだのは、地の利、理解のある母親がいたこと、小学校の頃タップダンスを習っていたことなど自然な流れだった。同期生には寿美花代さんがいた。映画初出演も学校(宝塚)が決め在籍中にすんなり実現した。東宝作品「ホープさん」に出演したのは19歳の時だ。
しかし、宝塚退団後は東宝ではなく松竹と契約した。野球ファンだった故・高峰三枝子さんが、高千穂さんの父でプロ野球審判員の二出川延明氏と交流するうちに松竹とのネットワークができての決断だった。鶴田浩二主演「闘魂」など10本に出演するものの、現代劇への執着を捨てきれず、現代劇に意欲をみせていた東映に誘われ移籍する。皮肉なことに、東映でも高千穂さんの活躍の舞台は時代劇ばかりとなるが、精力的に出演し萬屋錦之介(当時は中村錦之助、後に萬屋錦之介)・東千代之介など人気男優の相手役を数多く務めた。東映での出世作となるのが本作だった。
「本作では最初、別の役でのオファーがありましたが、どうしても胡蝶尼を演じたくて直訴しました。女優として認知されたいという思いが強かった時でしたので気合いが入っていたと思います。妖術使いや怪しい人達がでてくる幻想的な作品なので、劇にとけこまないと作品が活きないと思い楽しんで演じました」と高千穂さん、宝塚での経験が違和感を感じさせなかったという。
本作に出演したのは22歳。以降、東映の看板スターとして<東映城のお姫さま>と呼ばれるまでになったが、女優としての力量を発揮できる作品を求めて挑戦し続けた。女優として満足している出演作に関して高千穂さんは、「女だけの街」「夜の波紋」「ゼロの焦点」を自身のベスト3に挙げる。
お姫様役を嫌った高千穂さんだが、可憐な胡蝶尼に心奪われたファンは多いはずだ。 |