「第114回監名会」が、映画の日の昨年12月1日、五反田のイマジカ東京映像センターで開催された。上映作品は、長年国民的時代劇として高い人気のあったテレビ時代劇「鬼平犯科帳」の劇場版。原作 池波正太郎、監督 小野田嘉幹、製作 松竹。上映後、時代劇プロデューサー 能村庸一さんからこの映画にまつわる話をきいた。能村さんは、フジテレビ入社後、編成企画部、開発調査部などを経た後、フジテレビ時代劇プロデューサーとして、「鬼平犯科帳」、「仕掛人・藤枝梅安」、「八丁堀捕物ばなし」、「剣客商売」など、主に松竹製作ドラマで企画構成やプロデューサーを務めてきた。司会進行は俳優の滝澤めぐみさん。以下は能村さんの話。
『 映画「鬼平犯科帳劇場版」は、テレビの「鬼平犯科帳」があったから製作できたとも言える。その意味でテレビでの手法をそのまま使うとしても、今回はできるだけ映画の特徴を生かす手法をとった。その一つ、鬼平(火付盗賊改め方長官 長谷川平蔵)の人柄・行動で、テレビでは、鬼というより仏の平蔵の面がよく出ているが、映画では、ハードなアクションを多くした。泥田での刺客との立ち回り、拷問、左手の切り落としなど、鬼の面を強くだした。その意味でアクシ
ョン映画になり過ぎたきらいはある。』
更に能村さんは、原作者の池波正太郎について語る。
『池波さんは、キャスティングにおいても、鬼平役にはどうしても中村吉右衛門をと譲らず、その意味でこの映画の最大のプロデューサーだった。』
『池波さん(鬼平)の人間哲学は、「人間というものは良いことをしながら、悪いこともする。悪いことをしながら良いこともするものだ。」と勧善懲悪の説はとらない。一人の人間にも顔は二つあり、一つは日ごろ埋没していると言う。また、盗人3ケ条(盗まれて困る人からは盗まない。人を殺さない。女を犯さない。)を破れば重く処罰するが、守れば、盗人にも寛容な態度をとるのが鬼平裁きの基準となっている。』
「鬼平犯科帳」で心を打たれるのは、厳しい態度の中に滲み出る鬼平の人間味である。これがあるから、元盗人たちは密偵として心から鬼平のために働くのだ。
中村吉右衛門はそれを見事に演じている。「鬼平犯科帳」は劇場版の形で今後とも製作されることを期待したい。
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