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2013年2月16日

第115回 「マタギ」

おはなし:映画監督 後藤 俊夫 さん

「第115回監名会」が、2月16日、京橋のフィルムセンターで開催された。上映作品は「マタギ」。巨熊との対決に執念を燃やす老マタギ(猟師)(西村晃)とマタギ犬を育て上げる孫との情愛の物語である。
監督 後藤俊夫、撮影 山崎尭也。後藤監督は、1962年新世紀映画社に入社、山本薩夫監督に長年師事する。監督デビューは、1976年、雀と少年を題材とした作品「こむぎいろの天使」。ふるさとの信州伊那谷(飯島町)に活動拠点をおき、動物と人間のふれあいや、自然をテーマに「生きる」といことを人間に問いかける作品を多く手がけてきた。以下は、上映後のトークで後藤監督が語った1年間にわたる撮影の裏話である。(撮影場所は秋田県阿仁町 現北秋田市阿仁地区の山中) 司会進行は俳優の滝澤めぐみさん。

「老いて目を患い、病気で死期を悟ったマタギ犬の母犬が、そっと家を出て後を一度振り返り暗い森に消えていく。このシーンは、死期を悟った動物の心情を察した思いやりの心をこめて撮った。」
「3mの樋熊は北海道・登別の熊牧場から借りた。雪山での獰猛な熊の撮影に備えて、周囲100m四方に高さ5mの鉄柵を作り、熊を放した。3m以上の積雪のため、熊は雪面を足で固めて柵を越える恐れがあり、柵前の雪かきは毎日のように行った。」
「熊が襲いかかってくるシーンの撮影では、ロープをくくりつけた熊をモーターの力で操作。撮影途中、熊の勢いに押されてスタッフがカメラごと崖下に転落したこともあった。猟師の危急にマタギ犬が猛然と飛び出し闘う場面で、犬が熊に打たれて死んだように見えるのは麻酔で眠らせていたもの。」
「使ったマタギ犬は、容姿の似た6匹の兄弟犬の中から、臆病な犬、闘争心の強い犬などそれぞれの性格に応じて場面を使い分けた。熊との対決には、血統が良く闘争心と警戒心を兼備えた犬を選んだ。そんな犬は100匹に1匹いる位だ。」

この映画の圧巻は、終盤の大熊と老マタギ、マタギ犬との雪中の死闘、とりわけマタギ犬の闘いぶりである。また、全体を通して、家族の絆、おもいやり、自然、野生動物と人間との共生の心が流れていて感動した。この作品は、ベルリン国際映画祭でユニセフ監督賞を受賞している。

(文・中村才一 写真・島崎博)





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