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2014年5月1日
第120回 「不毛地帯」
おはなし:俳 優 仲代 達矢  さん    映画監督 後藤 俊夫  さん

 夏を思わせる陽気となった5月1日(木)に「監名会 第120回」が京橋のフィルムセンター小ホールで開催された。上映作品は山本薩夫監督の『不毛地帯』(1976年)。本作の原作者は、スケールの大きい社会派小説で長年に渡り人気を博してきた山崎豊子さん。山崎さんは去年9月に惜しまれながら鬼籍に入られ、その追悼上映でもある。原作は、週刊誌連載中(73年〜78年)にロッキード事件などが明るみになったことでも話題となり、本作も含め何度も映画化、ドラマ化されたベストセラー小説。原作の前半を映画化した本作では、終戦時にシベリアに抑留され重労働の刑を課せられた主人公がようやく帰国し、新たな人生を踏み出すべく商社へ入社するものの、大本営参謀としての経歴を買われた人事により、入社時の思いに反し自衛隊の戦闘機選定という受注争いに関わることで、次第に本能的な参謀としての才能を発揮し暗躍するが、その過程で大切な親友を失い、人生への思いを新たにする過程が描かれる。今回の上映会の客席には、本作にも社長秘書役で出演された俳優の石濱朗さん(監名会第78回、104回、116回にゲストとして、88回にはインタビュアーとしてもご参加)も駆けつけてくださった。
 上映後は、主人公「壱岐正」を演じられた俳優の仲代達矢さん、本作制作時に監督補佐を務められ、その後に数多くの監督作品を生み出された後藤俊夫監督のお二人がこの日のゲストとして登壇された。司会進行は俳優のにしいひろみさん。

 山本監督に代わり海外ロケ監督を任されていた後藤監督と、当時から後藤監督を「ごっちゃん」と呼ぶ仲代さんとで、終始和やかな雰囲気でお話が進んだ。
本作の撮影当時は44歳、現在は81歳になられる仲代さんは、淡い橙黄色のシャツにサファリハットという爽やかな出で立ち。ほぼ40年前のこの作品を久しぶりにご覧になられ、社会派作品の実力者の山崎先生と山本監督(仲代さんは山本監督を「さっちゃん先生」と呼ばれていたという)が組んだ作品らしく「時流に負けないリアリティと力強さのある作品」だと改めて感じたのと同時に、俳優座でお世話になった小沢栄太郎先生(貝塚官房長役)や丹波哲郎さん(川又空将補役)など今は亡き方々との共演時の役作りなどが思い出され「涙が溢れた」という。そして、当時の役者達は台詞をはっきり明瞭に話す話術だったことや、一つの芝居も丁寧に細かく作り込んだこと(途中、黒澤監督『七人の侍』の撮影時には歩き方に半日稽古をつけられたという有名な逸話も交えて)、将に日本映画の黄金時代の作品群に参加していたという幸福を、今一度実感されたことを感慨深げに語られた。
また、海外ロケを一手に任され、様々な苦労をされた後藤監督も、ニューヨーク五番街では無許可で撮影したことや、各航空機メーカーに取材を断られ、戦闘機視察のシーンは飛行機整備工場で撮影したエピソードなども披露された。
去年で芸能生活60周年を迎えられた仲代さんは、現在も舞台、映画、TV、三つの場所で活躍を続けながら俳優養成所『無名塾』で後輩達の育成に力を注いでおられ、後藤監督は新しい映画の企画を練りながら、次回作に意欲を燃やしていらしゃるという。かつて日本映画の黄金時代を築かれたお二人が、その息吹を今に受け継ぎ、伝えていくお姿に改めて感銘を受けた。

(文 菅原英理子  写真 島崎博)





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