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2019年8月10日

第141回 「急げ!若者 TOMORROW NEVER WAITS

おはなし:映画監督  小谷 承靖  さん  
インタビュアー:映画評論家  寺脇 研  さん

 記録的な猛暑が続いた令和の夏。8月10日(土) 国立映画アーカイブ(京橋)にて監名会 第141回が開催された。上映作品は『急げ!若者 TOMORROW NEVER WAITS』(1974年)。当時の若者に絶大な人気を誇ったフォー・リーブスと郷ひろみを起用、アイドル映画から文芸映画まで幅広いジャンルの演出に定評のある小谷承靖監督が瑞々しい青春群像劇に仕上げた。
 孝二(北公次)、昌夫(おりも政夫)、敏男(江木俊夫)、隆(青山孝)の4人は孤児院から巣立つ卒業記念に吹き込んだカセット・テープが切っ掛けとなり、レコード・デビューが決まる。「フォー・リーブス」としてのデビューに向け、それぞれ苦悩し葛藤する日々が描かれている。上映後は小谷監督をゲストに迎え、映画評論家の寺脇研さん(当法人前理事)がインタビュアーを務めた。司会進行は俳優の竹内千笑さん。
 小谷監督と寺脇さんのお二人のご縁は、小谷監督のデビュー作 『俺の空だぜ!若大将』(1970年•加山雄三主演)の映画評を、学生だった寺脇さんが『キネマ旬報』に寄稿した50年前にさかのぼる。寺脇さんは「掲載後に小谷監督からお葉書を頂いたのですが、地方在住の高校3年生にとって映画監督からの手紙は大事件。私の一生の思い出です」と懐かしんだ。
 近代の映画を先取りするスピード感に圧倒された寺脇さんに、小谷監督は「全て実在の場所に出向き、現場で撮影するオールロケでした」と説明。「ライブシーンをはじめ、台詞や音楽・歌を先に収録する『プレスコ』を行い、その後、現場で音を流しながら撮影する『プレイバック』という手法を使いました。その方法で、スタジオのセットではなく、全て野外での撮影を敢行したので、非常に手間がかかっているんです。カメラも今のような小型ではなく当時は大型カメラ。スタッフ陣に相当な苦労をかけたと思います」と振り返る。「ラストの川辺のライブシーンも、地上から私がトランシーバーで指示し、上空のヘリから撮影。何度も何度も撮り直しました」と明かし、「今だったらドローンがあるから随分と楽だったでしょう」と微笑んだ。
 小谷監督は、本作に「ビートルズの映画」へのオマージュを込めたとも。また、後年に制作された同じくジャニーズのアイドルグループ主演作『ロックよ、静かに流れよ』(1988年 男闘呼組主演)の長崎俊一監督が、本作に感化されたことにも言及。海外映画の潮流を汲む本作が、後進の邦画に影響を及ぼすという相関性の紹介を受け、寺脇さんも「小谷監督は国際人。フランス、アメリカ、香港など世界各地で映画制作に取り組み、当時の日本人監督としては希有な存在でした。作品にも小津監督や黒澤監督にはない『モダンさ』が漂っています」。
 本作の撮影監督であり恩地監督や黒澤監督の数々の作品を手掛けたカメラマンの上田正治さん、孝二の勤めるガソリンスタンドのチャーミングな同僚役を演じた俳優の青木英美さん、エキストラで参加した往年の「フォー・リーブス」ファンの皆さんが客席を埋め、会場は大いに賑わった。
 折しも上映会当日8月10日は、2009年に亡くなった「フォー・リーブス」のメンバー•青山孝さんの誕生日。「この日に上映出来て良かった」と感慨深げな小谷監督。奇しくも上映会の一月前には本作プロデューサーに名を連ねたジャニー喜多川氏も鬼籍の人となった。寺脇さんは「昨今は本作をより大きなスクリーンで再上映したいという気運も高まっています。本日は記念に残る上映になりました」と結んだ。
 現代にも通ずる若者群像を描き出した上映作。色褪せることのない青春映画の金字塔は、今日も私達を魅了する輝きを放ち続けている。

(文:菅原英理子 写真:岡村武則)





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