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2021年2月16日

第147回 「黒部の太陽」

 上映作品は『黒部の太陽』(1968年)。「昭和の大スター」石原裕次郎、「世界のミフネ」三船敏郎のダブル主演。社会派監督の熊井啓がメガホンを取った。驚異的なヒットを記録し、同年の年間興行収入第1位に輝いている。 原作は毎日新聞に連載された木本正次のノンフィクション小説(1964年)。「世紀の難工事」と言われた、黒部ダム建設が題材だ。1956年(昭和31年)着工、1963年(昭和38年)に完成。途中、地下水を含んだ軟弱な地層「破砕帯」と遭遇し、長さ80mの掘削に7ヶ月も要する難関を乗り越え、171人もの殉職者を出した。苦闘に満ちた歴史は今日も語り継がれる。NHKのプロジェクトXでも取り上げられた、日本で最も有名なダムでもある。
 物語は高度経済成長の時代。関西電力が黒部川上流に発電所とダム建設を計画した時点から始まる。工事の総責任者の北川(三船敏郎)は、現場主任の岩岡源三(辰巳柳太郎)、その息子、岩岡剛(石原裕次郎)とともに難工事に挑む。トンネル開通までの死闘が、源三と剛との父子の葛藤、剛と北川の長女・由紀(樫山文枝)との恋愛を織り交ぜながら描かれる。
 当時、石原は日活専属、三船は東宝専属だったが、それぞれ「石原プロモーション」、「三船プロダクション」を設立。意気投合した2人は両プロの合同制作で本作の映画化に意欲的に取り組むが、各映画会社が自社専属の俳優や監督を囲い込む「五社協定」に阻まれた。さまざまな逆風に見舞われるも奮闘を続け、電力会社から前売券の保証を取り付け、映画会社からは配給承認を引き出し、制作に漕ぎ着けた。2人の執念が五社協定に風穴を開ける橋頭堡となった。「石原プロモーション」が58年の歴史に幕を下ろしたのは本年の1月16日。この時に監名会で、本作の完全版の上映が実現したタイミングも感慨深い。
 コロナ禍のためゲストの招聘は見送られたものの、司会進行は俳優の竹原名央さんが務め、未来の通常再開を夢見る会員が客席に集った。 大自然に果敢に挑んだ人々の姿は、予測不能なコロナウィルスに立ち向かう現代人の姿とも重なる。また、映画界の禁断の掟に対抗した主演俳優、石原と三船の情熱と行動は、さまざまな因習と戦う現代世界の動きを彷彿とさせる。スクリーンを通して本作から送られた不屈のエールを、我々はしかと受け止め、閉会となった。

(文:菅原英理子 写真:岡村武則)





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