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2021年10月23日

第149回 「浮雲」

 爽やかな秋晴れとなった10月23日(土)、「監名会 第149回」が開催された。新型コロナウィルス感染拡大予防のため、国立映画アーカイブ(京橋)では入館時の検温とマスク着用が恒例となる。

 上映作品は成瀬巳喜男監督の『浮雲』(1955年)。小津安二郎、溝口健二、黒澤明らと並ぶ日本映画界の四大巨匠の1人でもある成瀬監督の畢生の大作は、日本映画史上最高の恋愛映画との誉れが高い。林芙美子の同名小説を原作に、女性シナリオライターの草分けである水木洋子が脚本を手掛けた。小津監督をして「俺にはできないシャシン(映画)」と言わしめた本作、市井の女性を叙情的に描き出し、女性映画の名手として知られる成瀬監督の手腕が際立つ。1955年度キネマ旬報ベストワンを獲得。

 物語の舞台は終戦後の荒廃した日本。戦時下の植民地・仏印で出会い、恋に落ちたタイピストの幸田ゆき子(高峰秀子)と技師の富岡健吾(森雅之)は帰国後に再会を果たす。既婚者の富岡はゆき子との約束を違えて妻と離婚をせず、失望したゆき子は別れを決意するも、富岡との関係を断つことが出来ない。離れようとしても離れられない一組の男女が時代の流れに翻弄されていく姿が描かれる。

 プロ意識が高く職人気質な成瀬監督は、映像を頭の中で完璧に組み立ててから現場入りしたという。脚本の不必要なセリフやト書きを極限まで削り、無駄を廃して撮影した的確なカット割りは折り紙付きだ。現場でのスケジュール管理も徹底されており、残業ゼロが実践されていた。大掛かりな撮影を好まない成瀬監督は、伊豆のロケで亜熱帯地方の植民地を再現し、戦後の闇市や伊香保温泉地の石段はスタジオ内のセットで撮影したという。

 コロナ禍により今回もゲストの招聘は見送りとなる。俳優の竹原名央さんを司会進行に、大スクリーンでの名作鑑賞を愛する会員一堂が集った。
やるせない作風から姓名をもじって「ヤルセナキオ」とあだ名された成瀬監督。戦後という時代のはざまで疲弊する主人公たちは男女の普遍の姿であり、コロナ禍に困惑する現代の我々とも通じる。怒濤と混迷の時世に生きる男女の愛と悲哀を、時代を超えて噛み締めながら上映会は閉幕した。

(文:菅原英理子)





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