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第006回 「早稲田松竹映画劇場」支配人 菊田眞弓さん
「おかえりなさい」
 高田馬場駅から早稲田へ向かう学生街の一角に、昔懐かしい一軒家の映画館があります。それが一昨年暮れ、再オープンした早稲田松竹映画劇場。その古めかしい外観とは違って、場内は清掃が行き届いていており、清潔感と落ち着いた雰囲気が心を和ませてくれます。ロビーに座っていると、受付嬢が来場してきたお客さんを「おかえりなさい」と出迎えていました。映画館で聞きなれない言葉ですが、この劇場では、入場当日に限って再入場を認めているとのこと。「学生さんに、授業の合間にでも映画を観てもらえればと思って」そう語ってくれたのは、菊田眞弓支配人。
新しい世界、映画興行界へ
 菊田さんが、映画興行の世界に入ったのは、二年前のことでした。それまでは、映画興行とは縁のない世界にいたそうです。郷里、熊本の高校を卒業した菊田さんが選んだ道は、警視庁の婦人警察官でした。以来、結婚して子育てに入るまで、交通、捜査などさまざまな警察業務に従事したとのこと。そんな菊田さんの趣味は映画鑑賞でした。休日にはしばしば映画館に通っていたそうです。「そんなに多くは観ていませんが・・」そう語る菊田さんですが、印象に残っていた作品は「砂の器」。警察を退職し、子育てに専念している時も映画館通いは続きます、幼いわが子と一緒に。親子で映画を見ることによって、子どもとコミュニケーションができた、と菊田さんは語ってくれました。
 子育てが一段落した後、任期付職員として警視庁に復職した菊田さんでしたが、転機が突然訪れます。警察OBを対象にした求人の中に、映画館支配人の仕事があったのです。ちょうど職員としての任期が切れる間際であった菊田さんは、早速応募しました。その劇場が早稲田松竹だったのです。
町の映画館として
 映画館業界とはまったく無縁のところから飛び込んだ世界。しかし、菊田さんは、今までの経験を映画館経営に活かしていこうと試みます。それは、警察官時代に培った地域住民とのふれあい体験を活かした経営。冒頭にご紹介した再入場制度も、早稲田という土地柄、学生が多いことから考え付いたそうです。また、地域の集まりには積極的に参加し、番組編成にあたっては、地元の人々の声も生かすようにしている、とのこと。そのような努力が実を結び、今では、地域の回覧板や早稲田大学のスポーツ新聞等に番組宣伝を無料で掲載してもらっているそうです。また、親子で映画を観てコミュニケーションをはかった経験から、この夏休みには新たな企画を試みます。それは、7月下旬の一週間、アニメ二本立上映時、子どもを同伴している父兄の料金を800円の地域感謝特別料金にしたことです。
「親子で映画を見ることで、子どもたちの情操を育んでいければ」そう語る菊田さんは、映画館の支配人であるとともに、一人の母親の姿でした。
 子どもたちに与える映像文化の功罪について様々な議論がなされる昨今、映画館とはその地域の文化発信地であるだけではなく、地域の人々の世代を越えた交流を育む公共的な場所であることを、この劇場は思い起こさせてくれました。
(取材・構成:木村昌資 写真:竹下資子)
【早稲田松竹映画劇場ホームページ http://www.h4.dion.ne.jp/~wsdsck/





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