スカウトされて映画界入りした私は、一作めの『君死に給うことなかれ』だけで映画はやめるつもりでした。
しかし二作目の『不滅の熱球』が決まった時、「それなら10年間恋もしないでまっしぐらに女優としてやってみよう」と決心しました。昭和30年のことです。
丁度その頃『ローマの休日』を見ました。清楚で明るいヘップバーンの魅力に、私ばかりでなく世界中が虜になりました。あの時の「私だって負けるもんか」という思いが、今も映画界に籍をおく原動力となっています。
王女(オードリー・ヘップバーン)が、生まれて始めて独りローマの街に出て、美容院でショートカットにした時の輝き。
あの時王女からアンへ変身、ローマの休日が始まります。
グレゴリー・ペック扮する新聞記者とバイクで街の中を走り回ったり、船上パーティでの奮闘・・・、 ローマを舞台にくり広げられた楽しかった一日。その中で生まれた恋、王女を自覚しての別れ、そして会見。グレゴリー・ペックが王女に記者の一人として質問をする。答えるヘップバーン。感情を押さえた二人の表情に感情移入してこちらも切なくなってしまう。
『ローマの休日』の色々なシーンを思い出すと、私が映画界に入ったばかりの頃が、今もなつかしく蘇ってきます。
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