インターネット エクスプローラーダウンロード
推奨環境:IE5.5以上



 HOME > 思い出の映画この一本 > 連載記事


第007回 「約束」斎藤耕一
 仕事柄、東京を離れる事が良くある。その時の乗り物は様々で、“飛行機”であったり“新幹線”であったり“バス“であったり…そしてそれが、”列車“…小さな町から町をつなぐ在来線だったりする時、私は必ず思い出す映画がある。斎藤耕一監督作品『約束』。
“汽車”。そこに乗り合わせ、そして運命的に巡り会ってしまったひとりの女囚と強盗犯の青年…。“列車”にこだわらずとも「日本映画で好きな映画は?」
と聞かれると、『約束』です。といつも答えてしまうのだ。お気に入りの喫茶店を“教えてたまるか“と1人占めする時のように、そーっと心にしまい込みたい作品―それほど私にとって大切な映画になった。
この映画と出会ったのは確か20代前半だったと記憶している。岸恵子さんと萩原健一さん以外出演者は少なく、でも脇で二人を取り巻く人々の存在が丁寧に描かれていて…だからこんなにも悲し過ぎる男と女の出逢いがより強烈に浮き上がってくるのだろうと、人生の入り口に立ったばかりの若かった私は、ドラマチックな悲しさに戸惑い、少々酔っていたのかもしれない。
 当時あまり日本映画を見なかっただけに、雷に打たれたような思いがして、ある種のショックを受けた事を今でもはっきり覚えている。なんだかイタリア映画を見ているようでもあった。台詞が少ないのに、何故こんなにも言葉が聞こえてくるのだろう?何故こんなにも愛を感じさせてくれるのだろう…と1シーン、1シーン釘づけになっていた。
今でも目を閉じると映像が浮かぶ。50歳を過ぎた今、もう1度この映画を観たいと思う。あの頃より、もっとのめり込みそうで怖い。今回参考資料にと、お願いをして送って頂いたパンフレットの端に書かれていた言葉。『約束とは明日にかけるもの。こわれないようにやさしく、逃がさないように激しく』、そんな約束の出来る女になれたら…そしていつか岸さんのような女優になれることを夢見たのだった。
(女優 二木てるみ)





組織概要   入会案内   個人情報保護指針   よくある質問   お問い合わせ

Copyright (C) 1981 - CurrentYear MCAC All rights reserved.
 
Powered by L-planning