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第027回 「ニュー・シネマ・パラダイス」ジュゼッペ・トルナトーレ
 「ニュー・シネマ・パラダイス」が日本公開された1989年、当時私は会社勤めからライターに転身をはかろうと猛勉強中で、そのためにできるだけ多くの本や映画に触れようと必死になっていた。映画は公開中のものは劇場で、リアルタイムで見ていないものはビデオを借りてきて憑かれたように毎日見ていた。
  「ニュー・シネマ・パラダイス」も劇場で見たかったが、仕事が重なりとうとう機会を逸してしまった。しばらくしてビデオ化されたので借りて来て見た。見終わって、それまでに見たどの映画より当時の私の心を揺さぶった。
  シチリアの小さな村にたった一軒しかない娯楽施設の映画館を舞台に、無学だが心優しい映写技師・アルフレードと彼を父のように慕い、いつしか映画への想いを膨らませてゆくトト少年の交流、トトのピュアな初恋、純粋な恋をもりあげるエンニオ・モリコーネの甘美で優しい音楽など、完成度の高い作品は私を感動させるには申し分なかった。「村を出ろ。ここにいると自分が世界の中心だと感じる。人生はお前が見た映画とは違う。帰って来るな。郷愁に惑わされるな。自分のすることを愛せ。子供の時、映写室を愛したように」と厳しく青年のトト(サルヴァトーレ)に言ったアルフレードの言葉は、まるで新しい世界を目指している私に向けられた言葉のように感じ、胸に響いたのだった。
  老朽化した映画館が、アルフレードの死の知らせで 30 年ぶりに村へ帰ってきた、今は映画監督であるサルヴァトーレや村民たちの前で壊されるシーンは、新しい時代への幕開けを意味していて印象的だ。
 幼い時には見せてもらえなかったラブシーンをつないだフィルムを受け取り、会社の試写室で独り見るシーンは、何回見ても涙が止まらない。
  その後ライターとして活動できるようになって、試写室で、映画館で何本の映画をみたか…。しかし私はいまだにビデオでしか見ていない「ニュー・シネマ・パラダイス」が最高の一本である。(当会報では「監名会リポート」「シネマガイド」を毎号担当)
(フリーライター 桑島まさき)





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