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第028回 「米」今井 正
 昭和32年41本目の作品「米」(今井正監督)という大作につくことになりました。私は、この作品で【録音設計】を監督の胸を借りて試してみようと思いました。
時に、28歳、一番若いメインスタッフでした。幸い今井監督は、自分の意見は言わず、音に関しては「岩田さん此処はどう処理しますか?」と訊ねてこられるので、私にとっては絶好な試す場となりました。
霞ヶ浦の湖上でのお祭りのシーン。2艘の船の上に、やぐらを組んで、てんでに「オカメ」「ヒョットコ」のお面を付けて楽しく踊りながら湖上を走り回るシーン。
事前に、旅館に集まって監督・メインスタッフ・音楽の芥川也寸志さんとの打ち合わせで、監督は、「皆さん、この祭りのシーンをどのようにモンタージュしたら良いと思いますか」と、意見を求めました。誰も返事をする人はいませんでした。しばし沈黙。すると監督が「岩田さんどうします」と私に意見を求められました。2年ほど前に見たアメリカ映画ウィリアムホールデンとキムノバーグ主演の『ピクニック』の一場面。年に1度の村をあげてのピクニックを公園で行います。歌ったり、踊ったりゲームをしたり、賑やかなことと思いますが、夫々カットで紹介して隣の音を聞かせません。「面白い手法だな」と思いました。 それを思い出して提案してみました。
『オカメはスローなテンポの踊り、ヒョットコは速いテンポの踊り、それをカットバックしてズームバックすると何百艘の船というのはいかがですか』と即座に「この作品は海外に紹介する作品ですよ、和樂が解らないのに切り刻んでは全然解らなくなりますよ」作曲家の意見に黙って聞いていた監督が「岩田さん一寸作って聞かせてくれませんか」1フレーズ1.5秒の笛の音を、4.5秒・4.5秒・3秒・3秒とつないで聞かせますと、「これで行きましょう」となりました。
田植えから始まって年明けまで私には、サウンドデザインの基礎になりました。非常に勉強になった作品です。因みに「米」は昭和33年(1958)年度の映画賞を総なめにし、私も録音賞を頂きました。
(録音監督 岩田 廣一)





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