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2007年09月01日
第094回 「めぐりあい」
映画監督:恩地日出夫さん、映画評論家:寺脇研さん
幾多の日本映画、とくに戦後から昭和40年代初めの作品には当時の市民の「貧しさ」がきちんと描かれている。貧しいが、人々は溌剌としたエネルギーに溢れている。それは、豊かな時代に生きる人々に欠落しているようにも思え、貧しいということは大事なことだと改めて考えさせられる。
邦画の検証と継承を標榜する映文振センター主宰の第94回「監名会」(年4回)が、9月1日、京橋のフィルムセンターで開催された。上映作品は、恩地日出夫監督の「めぐりあい」(1968年)。配給は東宝。
川崎の工場街に生きる工員(黒沢年男)と女店員(酒井和歌子)が、それぞれに背負った家族の事情に苛立ちながらも愛情を育くんでいく様を、ほぼオールロケで撮った瑞々しい青春映画だ。上映会の後、監督の恩地日出夫さんに映画評論家の寺脇研さんがお話を聞いた。司会進行は俳優の谷幸ノ助さん。
寺脇さんは本作を高校に進学する春に観た。「この映画を観なかったら別の人生に進んでいたかもしれない。自分にとっても“めぐりあい”だった」という記念すべき作品だ。
27歳で監督になった恩地さんは、一時、社会派、観念派といわれ2年間ほど全く映画を撮れなかった辛い時期を過ごした。その後、巨匠・木下恵介監督原作の「あこがれ」(内藤洋子主演)、続く「伊豆の踊子」、そして本作を撮り東宝の画期的な青春映画を誕生させることに成功する。
「監督としてもうダメかなと思ったが、木下監督原作の『あこがれ』を撮ることになり訪ねていったら、木下監督は実にじっくりと若い自分の話を聞いてくれました。改めて再評価されるべきスゴい監督だと思います。以降、肩の力を抜いて撮ることができました」と当時を思い出しながら語られた。
今から40年前に撮られた本作は、群衆で始まり群衆で終わる。その群衆シーンの技術をみると、現在の日本映画は退化しているように思う、と寺脇さんは厳しい。
「監督はスタッフに恨まれてもワガママを通して撮らなければならないのです。撮影所時代の技術があればこそ撮れた映画でした」と、恩地監督は穏やかな口調の中にも一徹さを感じさせるコメントを述べられた。
昔の映画とのめぐりあいは、つい忘れてしまいがちな大事なモノを思い出させてくれるものだ。
尚、近作「わらびのこう・蕨野行」(03年、芸術選奨・報知最優秀監督賞 他受賞多数)は全国で上映会が開かれており、紀伊国屋書店よりDVDも発売中です。
(文:桑島まさき、写真:島崎博)





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