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2008年08月16日
第098回 「旅の重さ」
脚本家:石森史郎さん
 多感な時期を生きる少女が大人の階段を登る過程の複雑な心の揺れや瑞々しい煌めき……通り過ぎた季節ではあるが、だからこそ懐かしくこの手の題材を扱っている小説や映画はついつい観てしまう……。
邦画の検証と継承を標榜する映文振センター主催の第98回「監名会」(年4回)が、8月16日、京橋のフィルムセンターで開催された。上映作品は、斎藤耕一監督の「旅の重さ」。上映会の後、脚本家の石森史郎さんが創作秘話などを話された。司会進行は俳優の平田仮面こと高崎直俊さん。
母親との関係に悩む16歳の少女(高橋洋子)が四国遍路のひとり旅を通して成長していく様を、四国の牧歌的な風景をバックに叙情的に描いた作品だ。覆面女性作家・素九鬼子の日記風に綴られた原作を石森史郎さんが脚本を書き、幾多のメディアから石森さんの代表作と絶賛された作品だ。「いまから36年前、41歳の時の作品です。当時は日活から松竹へ移り大変張り切っていた時期だった。一人称、セリフのない女性作家の紀行文学をどう脚本化しようかと腐心しました。<少女>が<女>になるまでの性の神秘のプロセスを、ギリシャ神話の七つのベールにヒントを得て、旅のシフトによって、一枚一枚剥ぎ取りながら主題に迫る脚本の構成をとろうと思考が固まり、一気に書き上げることが出来ました。この作品は、少女が女へと成長してゆく旅であり、見知らぬ父へのイメージを求める旅でもありました。16歳の性への憧れや畏れなど微妙な心理や感情を僕自身を16歳の少女に化身させ心を解き放ち、苦労もせずに描いたように思います。こうした点では、それまでのシナリオ創作とは異なった貴重な経験だったと思うし、無名の新人女優(高橋洋子)を起用して成功した画期的な試みの作品だったように自分では評価しています」と自身の体験をジョークを交えながら滔々と語られた。
当時新人女優が主役を務めるのは大変珍しかったという。何故、既存のルールを破って実現したのかについては、原作者も脚本家(松竹としては)も新人なので、ユニークな素材の小説でもあり、ならばヒロインも新人でいこうという流れになったそうだ。
少女が歩く四国の長閑な風景、葬式の風景など懐かしい「昭和」を堪能できる作品だが、大女優・秋吉久美子が女優デビューする前、ちょっとだけ出演している点も見逃せない。ヒロイン役をめぐって最後までモメたが落選した当時高校3年生の秋吉久美子は、落選したがゆえに(?)女優を目指し、大女優となった。本作のヒロインが無謀な旅にでて、自分の還る場所をみつけたように。人生は何があるかわからない。だからこそ面白い。人生、旅、愛の重さを実感した。
(文:桑島まさき/写真:島崎博)





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