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2021年7月17日

第148回 「七人の侍」

 真夏日となった梅雨明けの7月17日(土)、「監名会 第148回」が開催された。新型コロナウィルス感染拡大予防のため、国立映画アーカイブ(京橋)では入館時の検温とマスク着用が恒例となる。

上映作品は黒澤明監督の『七人の侍』(1954年)。「世界のクロサワ」のもと、「世界のミフネ」三船敏郎が侍の一人を演じる時代劇巨篇である。空前の大ヒットを記録し、リメイク作品も複数制作されている。ジョージ・ルーカスやフランシス・コッポラなど名立たる巨匠が触発され、近年は英国BBCの「史上最高の外国語映画ベスト100」1位も獲得。日本が世界に誇る最高傑作である。1954年、第15回ヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞受賞作品。

物語の舞台は戦国時代後期。戦乱で行き場を失った野武士の一団が盗賊化し、農村を襲撃し、略奪を繰り返していた。困り果てた農民たちは、腕の立ちそうな侍を宿場町に出向いて雇い、村を守る計画を立てる。歴戦の勇士で戦略に長けた勘兵衛(志村喬)を筆頭に、七人の侍が揃う。軍学に富んだ人格者の五郎兵衛(稲葉義男)、勘兵衛の元部下である七郎次(加東大介)、窮地でも愛嬌を失わない平八(千秋実)、凄腕の剣客の久蔵(宮口精二)、勘兵衛を師と仰ぐ勝四郎(木村功)、農民の出自を隠し浪人を装う菊千代(三船敏郎)。農民と侍たちとの交流、村娘の志乃(島津恵子)と勝四郎の恋愛を織り交ぜながら、野武士との決戦に至るまでの日々が描かれる。

綿密な時代検証とともに、橋本忍、小国英雄、黒澤監督のチームで練り上げられた脚本には、黒澤監督の愛した西部劇映画やシェイクスピア悲劇、ロシア文学などの世界観が随所にちりばめられている。七人の侍それぞれの個性は際立ち、農民たちのキャラクターも多様だ。
クライマックスの「土砂降りの雨」は、ジョン・フォードに憧れた黒澤監督が西部劇で荒野に舞う「土ぼこり」 になぞらえたと言われる。臨場感に溢れる殺陣シーンは、画像加工に頼ることなく、複数のカメラで同時撮影したものだ。一年がかりで撮影したリアリズムを極めた膨大なフィルムを、黒澤監督が見事な手腕で編集している。

コロナ禍によりゲストの招聘は今回も見送りとなる。俳優の竹原名央さんが司会進行を務め、毎回最高の状態での名作鑑賞を心待ちにする会員が集った。
2020年は黒澤明生誕110年、三船敏郎生誕100年となるメモリアルイヤー。去年から今年にかけて、本作のロケ地をたどる探求本や黒澤映画批評の年代記も刊行され、黒澤作品は今もなお私たちの心を掴んで離さない。
スクリーンに映し出された、野武士の襲来に七人の侍と農民たちが共闘する姿は、未知の敵コロナウィルスに立ち向かう私たちの姿であり、世界の多様性に葛藤する現代人の姿とも重なる。怒濤のエネルギーに圧倒された上映会は、余韻冷めやらぬうちに閉幕した。


(文:菅原英理子)





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