フェデリコ・フェリーニの映画が好きだ。なかでも甘いデカダンスが魅力の「甘い生活」が最高だ。しかし、この映画は公開時に見たわけではなく、思い出があったかどうか思い出せい。「8 1/2」は、都立立川高校の1年の時に見た。気負って日比谷まで見に行った。一緒にいった同級生の男子は「愚神礼賛」なぞを愛読書にしている学校きっての変人だったから、「8 1/2」を見た後ふたりで結構批評めいた言葉をかわしあった。芸術を見たという印象は強かったが、新聞などで騒がれているわりには、別に難しくもないなと思った。ところが、その後見るたびに「8 1/2」は傑作だということを発見する。「甘い生活」は、もともと好きだから好きだということを発見し続けている感があるが、「8 1/2」は、フェリーニの天才を何度も発見し直すのだ。そして、つい最近ヴェネツィア映画祭でこの映画のシナリオを書いた作家で随筆家のエンニオ・フライアーノについてのドキュメンタリーを見たら、「8 1/2」に出てくる学校での辛い思い出シーンは、フェリーニのものというより孤児だったフライアーノの実体験に基づくものだと説明があった。
そんなことを知れば知るほどますますフェリーニ監督はすごい天才だと思えてくる。他人の体験も才能もことごとく自分のものにしてしまうのこそ真の天才ではないだろうか。
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